エムズシステム

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「パーソナル・ソング」を観て。

2014/12/11
1000ドルの薬より、1曲の音楽を!
人の中に生きている「音楽の力」

私たちは毎日、自分の感情をコントロールしながら
生きています。落ち込んだ心を励ましたり、怒りに
震える心を抑えたり。この映画に登場する認知症の
方々も全く同じです。感情や情緒を抑え込む過程で
記憶まで無くした人々に「好きな音楽」を聞いて
もらうだけで心の扉が開き、彼らの顔に「生きている」
幸せの笑みが甦ります。音楽の本当の力を提示する
映画をご紹介します。

「パーソナル・ソング」を観てきました。青山
の小さな映画館です。それでも100席はあり
ます。ウィークデイの午後だからでしょうか、
その客席は20も埋まりません。テレビのワイド
ショーでも取り上げられた話題(?)の映画
ですから、もう少し入っているかと思いました。
でもお客の入りなどどうでも良いくらい、
素晴らしい映画でした。
「音楽の力」とはよく使われるフレーズですが、
まさしくこれは私たち人間には「音楽」がある
んだと気づかせてくれる映画です。

アメリカでは認知症の人が500万人を超えて
いるそうです。IT業界にいたダン・コーエン
は認知症の人たちに思い入れのある曲(パー
ソナル・ソング)を聞かせれば、曲の記憶と
ともに何か思い出すのではないかと考え、
「ミュージック&メモリー」という活動を
始めます。認知症の人たち一人ずつに好きな
曲を聞いてもらうのです。

映画が始まってわずか十数秒で、驚きの映像
が流れます。そこからは、驚きと感動でラスト
まで持って行かれます。
これほどキャッチーなファーストシーンを
持つ映画を見たことがありません。
巨大なスペクタクルシーンがあっても、のっけ
から迫力の脱出シーンがあっても、これほどは
驚かないと思います。

娘の名前さえ思い出せない老女にルイ・アーム
ストロングの「聖者の行進」を聞かせると、
一瞬にして彼女の表情に光が入り、目が輝き、
「これはルイ・アームストロングの聖者の行進
ね。母に内緒でコンサートに行ったことがある」
と語り出し、その当時のことを鮮明に思い出す
のです。

人間の記憶のメカニズムがどうなっているのか
分かりませんが、彼女の中の青春時代の記憶は
消えていたわけではなく、「Alive Inside」(中で
生きている)のです。これがこの映画の原題
です。音楽はその記憶の抽斗の取っ手に強力な
フックをかけて引き出してくれるのです。そこ
には当時の情景が、そのまんま見事に保存され
ています。
90歳になる彼女はどこで働いて、どの建物に
いたかさえ明確に澱みなく語り出すのです。

心の奥にある「怒り」が湧いてきて止められない
というギルに、ある音楽を聞いてもらうと、彼の
本来の優しい性格が、ほんの数秒で解凍され、
神々しいまでの慈愛に満ちた笑みが浮かびあがり
ました。
躁鬱症に悩むデニーズは、2年間使い続けていた
歩行器を手放し、陽気にダンスを踊り始めました。
音楽は、言語や思考の脳だけでなく、運動や感情の
脳にも作用するので、閉じ込められた情緒の扉が
開いた瞬間、身体も自然に動き出すのです。

音楽は人間の心や身体と、巨大なひとつの精神や
測り知れない大きさの宇宙と直接の繋がるパイプライン
なのかもしれません。つながることで安定し、
心の平和と、身体のバランスが取れるのではない
でしょうか。

ギルやデニーズは特別な人ではなく、現代人その
ものの姿だと思います。認知症という言葉で括られた
記憶を無くした人々として捉えられていますが、
現代を生きている私たちが多かれ少なかれ抱えて
いる感情と情緒の問題が顕著に表れた人たちと
呼べるのではないでしょうか。
社会的適合と勘違いして、その気持ちの芽を
心の奥底に埋め込んで行く過程で、その周辺の
記憶自体も閉じ込めてしまうのではないでしょうか。

ひとり一人の蘇生があまりにも鮮やかに映し
出されています。人の生命をこれほど見事に
差し出して見せてくれた映画は少ないと思い
ます。褒めすぎでしょうか。いや、もっと
もっと称賛され、多くの人に観て頂きたいと
思いました。

私はエムズシステムというスピーカーを製造
しています。
あたかも演奏家があなたのために目の前で演奏
したり歌ってくれているかのような心に響く、
全身を優しく包み込むサウンドがたった一つの
ボディで空間全体に広がり、どこに置いても
どこで聞いてもお楽しみ頂けるので、少しずつ
世の中で使われ始めてきました。
ひとつだけ残念だったことは私の母にこの
スピーカーの音を聞かせられなかったという
ことです。

母は78歳で亡くなりました。樺太生まれで、
ロシア語が上手で、朝食にはカフェオレと
クロワッサンを好んで食べていました。
最後の1年間はパーキンソン病が進行し、老人
養護施設で過ごしました。とても良い方々に
囲まれて幸せに過ごさせて頂きました。
息子の私としても納得のいく1年でした。
あまり耳のよくない母と、こんなに高い頻度
で会話したことが今までありませんでした。
ただ、ひとつだけ後悔したことがあります。
このスピーカーの音を聞かせてあげられなかった
ことが心残りです。
養護施設は高いレベルのケアが行われていて
とても満足していたのですが、いま思えば
「音」についてはどうでしょう? ホールに
集まって「音楽」を楽しみましょうという
時間があるのですが、そこにはプラスティック
なラジカセが1台置かれているだけでした。
それは確かに聞きなれた普通の音なのですが、
そのホールに集まっているお年寄りにこそ、
優しく、柔らかく、豊かな音色で包み込んで
差し上げたいと思いました。

音楽が持っている本当の力を引き出せる
スピーカーから聞こえる音は、身体を形作って
いる細胞を活性化してくれます。心を活性化
してくれます。

いまでは、エムズシステムの波動スピーカーを
様々な場所で活用して頂けるようになって来ました。
4年前からある老人ホームの食堂にも導入されています。
いままでは食事が終わるとすぐに個室に引き
籠ってしまいがちな方が、食堂にそのまま残り
お好きなジャズのリズムに身を任せたり、
クラシックの愛好家同士の会話が弾んだりする
そうです。
母には聞かせられなかったのですが、この仕事を
していてよかったと思いました。

音楽をスピーカーで流すとき、私たちは『再生』
と言う言葉を使います。見事な表現としか言いよう
がありません。音楽が誕生している瞬間を再び
生みだすのですから。
その音楽によって、私たち人間の中に生きている、
鮮明な記憶を再び蘇らせ、『生』を与えることが
出来るのです。

とかく聴覚のフィールドはないがしろにされがちです。
そんな中、「パーソナル・ソング」はそのキャッチ
コピー通り、1000ドルの薬より1曲の音楽を!
音楽の持つ本当の力を見事に表現してくれました。
一人でも多くの方が、この映画をご覧になり、
自分の中に生きている生命のビート(音楽)に
再び耳を傾けてくれることを願っています。

http://personal-song.com/

「パーソナル・ソング」を観て。


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