音が聞こえてくるということは、どういうことでしょうか。
それには、物理的、生理的、心理的な要素があります。
物理的に聞こえる、と言うことは。
音は空気の振動ですから、その振動を物理的に計測する
ことが出来ます。
周波数のHz（ヘルツ）や、音圧のdB（デシベル）という
単位で表現することが出来ます。
この単位表示はお聞きになったことがありますよね。
ラジオのチャンネルはヘルツで表していますし、騒音の
話が出てくると、この交差点は80デシベルだなんて表現が
なされます。
これらは計測器で数値表示が可能なわけです。
生理的にというのは、人体において、聴覚の仕組みのことを
示しています。
空気の振動が耳に届き、鼓膜が震え、その振動が増幅されて、
知覚センサーまで伝達されます。
実に精妙に作られた音伝達システムです。
人は聴覚動物と呼ばれていて、生まれるとき、胎児の中で
一番最初に形成されるが聴覚です。
私たちの聴覚は、例えばリンパの海に24000本のセンサーが
揺らめいていて、伝達されてきた音の信号が、パシャンと
海面をたたくと、その振動にどのセンサーが共振したかという、
組み合わせで、音の種類を判断しているのです。
人の声であるとか車の音だとか。チェロの音色だとか。
人間の生命組織の中でも最も複雑で精妙なセンサーの一つと
言われている所以です。
そして最後が心理的な要素です。
「それは心理的な要素に過ぎない」
「心理的な問題じゃない？」
うーん、少し懐疑的なトーンの声に出して言ってみてください。
そんな感じです。心理的な側面と言うのは
「気のせいに過ぎない」という物理的、科学的ではないという
文脈で使われ易いのですが、「気のせい」で物事が違ってきたら、
それはとても重要な、そして有効なことだと思います。
カクテルパーティ効果という言葉をお聞きになったことがあると思います。
大きな会場の中でにぎやかに宴会が開かれています。
人の声、グラスの音、BGMといった音がいっせいに鳴っていて、
ウォーンという騒音の只中でも、10m離れた人がどうも私の名前を
出して噂話をしているらしい、という声が聞こえてきます。
ここで「物理的」音の聞こえ方を測定してみると会場の騒音75デシベル
みたいな数値しかでてきませんし、同じ位置で録音してみてもウォーンと
言う騒音しか残されていません。
しかし人間の聴覚は自分に関連することとか、いま持っている関心事
についての音を、その騒音からより分けて聞きとる、選別する能力、
騒音をマスキングしてしまう機能が備わっているようです。
もちろんこれも物理的、生理的な機能の賜物なのでしょうが、
いまはまだ計測不可能なことなので『心理的』な機能として
捉えられているようです。
この3つの物理的、生理的、心理的要素が重なって「音が聞こえてくる」
と言うことになります。
したがって物理的な音の聞こえ方だけではなく、それを受け止める人間の
センサーとその心理的な機能によって、音の聞こえ方は違ってくるのです。
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