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Memo  2004年4月号 「今月のこの逸品」
    
エムズ・システム・サウンド「波動スピーカーMS1001」

モーツアルトが1曲だけ作曲した2台のピアノのためのソナタ、ニ長調K448。1781年の秋に作曲されたとされるこの曲は、優れたピアノの弟子であったヨゼファ・アゥエルンハイマーとふたりで弾くために書かれ、この女弟子の邸で開かれた演奏会で披露され評判をとったとされる。華やかできらびやかな音色が天才の閃きを感じさせる2台のピアノのためのソナタには、脳の働きを活性化させ仕事の集中力を高める効果があるそうだ。確かに、この曲を聴くと頭の回転数を上げる何かがこめられていると感じる。欧州では薬物認可されているが日本ではサプリメントとして供給されているイチョウ葉エキスの錠剤と共に聴けば、効果は倍増。このほかにも、理由のない寂とした気分を覚え、その正体を見極めるのには春への憧れK596が良いとか、人生の逡巡を吹っ切り、ある種の達観を得たいならピアノ協奏曲第27番変ロ長調K596が効くなど、音楽が脳の働きに何らかの影響を与えるとされる例は数多くある。

音楽を、感情のコントロールや行動の動機付けに活用するのも悪くない。そんな考え方をしてしまうのは自分が年をとった証拠なのかもしれないが、日々のストレスで凝り固まった感覚を揉みほぐすのの音楽を使うのは有効だと思う。何しろ風呂にゆっくり浸かるよりも手軽に、そして長い時間付き合える。一日のタイムシェアリングを考慮するならば、オーディオシステムはかなり効率の良いヒーリングアイテムに成り得るのだ。そんな観点から開発された、一風変わったスタイルのスピーカーを試聴してみた。



エムズ・システムのMS1001.両面太鼓の様な円筒の両端に装着された2つのフルレンジスピーカー。これ一台でステレオの音場を再生してくれるとは思えないフォルム。昔ながらの、いわゆるピュア・オーディオの世界では、四角て大きく何個もユニットを装着したスピーカーを2台設置し、その正面にあたる三角形の頂点に存在すると考えられるスイートスポットから微動だにせずに音楽を鑑賞すべし。というのが約束事だったと記憶しているが、MS1001では、左右のスピーカーが180度の方向を向いているのだから双方のスピーカーから出る直接音の行方の延長線上にリスナーは存在することが許されないのだ。振動するスピーカー同士を圧縮紙を重ねて作られた円筒の両端で対向させ、干渉波を相殺することにより、空間自体を共振させて間接音でリスナーを包み込むというコンセプト。はたして、ひとつのボディでステレオ効果が得られるだろうかという疑問を感じながら、その音を聴いてみる。


最近のオーディオ用のスピーカーで、ひとつのトレンドとなりつつある間接音。MS1001はたったひとつのエンクロージャーから音が放射されているにも関わらずリスニングポイントを変えて部屋の中を動き回ってもステレオイメージがくずれない。駆動されるスピーカーは10センチのフルレンジが2つだけなのだが、紙筒の中央に設けられたダクトがバスレフとなり充分な低音も聴かせてくれる。間接音を主体にして左右のユニットを鳴らすスピーカーも数多くが存在するのだが、その種の製品よりも、さらにまろやかに感じる。音が届くというよりはむしろ、空間に響く音に浸る感触が心地よくユニークだ。この独特な音響は、自分がティーンエイジャーの頃に聴いてもピンとこなかったかもしれない。ハイ・インパクトで耳に痛いサウンドではなく、空間に沁みわたり共振する波動に身を委ねる快楽。そんな大人のオーディオに興味を持たれたら、ぜひ試聴していただくことをお奨めしたいスピーカーなのだ。

空間自体を共振させるというコンセプトで生まれたスピーカー。使用ユニット8Ω、最低共振周波数80Hz、再生周波数帯域fo〜22kHz、サイズ200×400o、質量3200g。「エムズ・システム・サウンドMS1001」価格12万円。問:エムズ・システムрO42−341−7767 http://www.mssystem.co.jp   

           「メモ 2004年4月号 P138 ●月島 伸 ・著」



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