『耳』
「私の耳は貝の殻、海の響きを懐かしむ」
Mon oreille est un coquillage. Qui aime le bruit de la mer.
短い詩です。わずか一行。
ジャン・コクトーの詩を堀口大学が訳した
ものです。
このフランス語で書かれた一行の詩こそ
日本語に訳されるべき、まるで俳句の
ような素晴らしい展開が込められています。
耳~貝~海 視覚の広がりに合わせて、
耳の奥で聞こえてくる浜辺に打ち寄せる波の音も
立ち昇ってきます。
わずか一行の中で、視覚と聴覚が重層的に
展開していきます。
そして私の耳は海の響きだけではなく、
そこに懐かしい母の声も思い出すのです。
フランス語で海はmer。母はmere。
母の中に海があり、
日本語では海の中に母がいる。
この相関性の中でこそ、母を懐かしむ心情が
さらにいっそう強く感じられます。
まるで堀口大学の作のように日本語で
馴染んでいるこの詩は、母を幼いころに
失ってしまった彼にこそ訳されるべき詩なのかも知れません。
もうすぐ母の日ですね。
お母さんを想う気持ちを、何か形にしましょう。
せめて言葉にして、感謝を伝えましょう。
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